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18枚の紙切れ

かくとうタイプ:My name is VENDETTA.

読了目安時間:約 3 分です。

 日常の一コマとして切り抜くことができるであろう、ありふれた晩のことである。
 山岳地帯のとあるなだらかな荒地のような場所で、木の枝で火を起こして灯のかわりにしながら、二匹のポケモンが言葉を交わしていた。それは、ありふれた会話のようで、そうでもないかのような、複雑なやりとりだった。
 その二匹のポケモンというのも、青と黒で彩られた小柄なポケモン、リオルと赤と黄色の明るめの色に身を包んだコジョフーというポケモンである。どちらも子供のようなものであり、自立した身でありながらも、何処か幼げな雰囲気と大人顔負けの気迫を併せ持ったような姿をしていた。
 リオルが問いかける。

「なぁ、コジョフー。お前の戦う理由って、一体なんなんだ?」
「突然どうしたのさ」
「まあ、俺の話に答えてくれよ」

 唐突なリオルの問いに、コジョフーは困惑する。それでも敢えて答えを出すなら。

「……うーん、過去の精算の為に戦うか、それとも未来を掴む為に戦うか。その二つに大別されると思うけれど」
「過去の、精算ねえ」
「うん。つまるところ、過去に負けた相手に対する闘争心だとか、過去に何かを奪っていった者に対する復讐、だとか……」

 リオルはその言葉を聞いて、目を細める。

「まあ、過去の為に戦うのも……ひとつの戦士の在り方だと僕は思うよ」

 リオルはそう言い切ったコジョフーを目を見遣って、確信に至ったように嫌な笑みを浮かべる。その目には、何やら暗い感情が渦巻いていた。

「なら……俺も、許されるんだよな」
「……え?」

 リオルが下を俯く。その表情には影が差している。コジョフーはそんなリオルを見て違和感を覚える。

「例えば、お前の親が俺の親を殺していて、尚且つその子供が生まれた時にその親が死んでいる時、その子供に対して殺されたポケモンの子供である俺が復讐を働いても……それも戦士の在り方、なんだよなぁ……?」
「ちょっと、リオル……何を言って……!」

 リオルはコジョフーの頭を強引に掴んだ。そして、思いの丈を吐き出した。

「今まで、ずっと、待っていたんだ。お前に接触して、お前に付け入って、親の苦しみを、親の犠牲をプラスマイナスゼロに出来る瞬間を……! だから、頼むよコジョフー」

 コジョフーの頭を、リオルは近くの岩壁に叩きつけた。その頭部から手を離すことなく、リオルは何度も何度もコジョフーの頭を叩きつけ続けた。何度も何度も。何度も。

「俺は悪くない。だから死んでくれ。俺は悪くない。だから、俺の為に死んでくれ。俺は悪くない。だから、一度だけ、俺の為に死んでくれ」

 そんな二匹に、友情なんてものは初めから存在しなかった。この後、罪を背負ったリオルの行き先は、杳として知れない。

 

2018年2月12日作成
2018年2月12日更新
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