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18枚の紙切れ

ほのおタイプ:イカすぜ!猛火師匠!

読了目安時間:約 4 分です。

 古き良き時代曰く、炎、それは闘志そのものであると。
 そんな信念に、信条に則って、常に闘志を沸き立たせているポケモンが一匹、いや、二匹いるのだった。
 二匹はとある山岳地帯に寝床を設けて、修行の日々を送っている。

「バシャーモ師匠! 今日は何するんすか!」
「ふっ……アチャモよ。修行というのは、必ずしも『何かをすること』ではないのだよ。あるいは、『何もしないこと』こそが修行になることだってあるのだ」
「うひょー! 何言っているかさっぱりだけど、マジかっこいいっす!」
「ふっ……」

 そんなやりとりをしながら、師匠であるバシャーモ、弟子であるアチャモは山岳地帯から見える朝焼けを眺めていた。もとい、アチャモはただ単純にキャッキャとはしゃいではバシャーモの威厳ある姿に感嘆の声を漏らしているのだった。

「戦うことは億劫だ……だけど、それは戦う者が億劫であるとは限らないのだよ!」
「わーっ、カッコいいっす!」
「力とは何だと思うかね? 私はそれを傲慢だと定義する。故に、愚かにも自分の力の断片を露呈させる者こそが傲慢の罪に囚われているのだと思うのだよ!」
「わーっ、何言っているのかさっぱりだけどかっこいいっす!」

 決して師匠であるバシャーモが言っていることは的を外しているわけでも、ふざけた戯言を吐いているわけでもないのだけれど、弟子であるアチャモの茶化すようなリアクションのせいで、真剣味を削がれているように思われる。

「アチャモよ……炎とは、一体何処から湧き上がると思うかね?」
「えっ……それは、ううん? 体の奥からじゃないんすかね?」
「それは違うんだ、アチャモ。合っているけど、違うんだ」
「にゅ?」

 バシャーモは左手でアチャモのトサカをぴよんぴよんと弄り回す。アチャモはそれが気持ち良いのか無邪気にキャッキャと喜んだ。
 そして、バシャーモは言う。

「心の炎……という言葉があってな。誰が水を差しても消えないような、不思議な炎のことだよ。それが心から消えない限り、我々は常に闘志を燃やすことが出来る。それが何より豪快な業火であると、私は思うのだよ」
「ば、バシャーモ師匠ぉ……!」

 アチャモはその言葉を聞いて、目を大きく見開いた。そして、その場でピョンピョン跳ね始める。そしてピーピーと抗議の声を漏らした。

「バシャーモ師匠! その言葉、最近師匠が勧めてくれた小説に書いてあったっす! いくら師匠でもコピーアンドペーストは良くないと思うっす!」
「うっ……そうだっけ……?」

 『心の炎』と称して熱弁したバシャーモの言葉は、すでにアチャモの頭に刷り込まれている言葉だったようで、バシャーモは師匠としての威厳が半分くらい削がれた気分であった。
 だけれど、アチャモに言いたいことは届いている……はず?
 こんなシュールな師弟関係が続くのならば、バシャーモはいつでも熱血でいようと思うのだった。

 

2018年2月12日作成
2018年2月12日更新
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